「マラソンを科学する」
つくばマラソンは、「マラソンを科学する」という大会テーマのもと、マラソンを様々な角度から考え、「科学する」というフレームで毎年「進化してゆくマラソン大会」を目指しています。
今年は新たに「レース戦略」について取り組みます。
レース戦略を科学する
より良いパフォーマンスを発揮するための取り組みです。
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スタートを科学する
スタート時の混雑を緩和し、より安全なスタート環境を整えるための取り組みです。
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ランニングフォームを科学する
マラソンで効率的にペースを維持できるフォームを検討し、有益な情報を提供するための取り組みです。
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景観を科学する
コースやメイン会場を、来場者にとって走りやすく、わかりやすい環境にするための取り組みです。
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給水・給食を科学する
正しい給水方法、栄養に配慮した給食を提供し、健康的に走ってもらうための取り組みです。
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応援を科学する
ランナーの活力となる沿道応援を活性化するための取り組みです。
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レース戦略を科学する
マラソンでよいパフォーマンスを発揮するためにはレース戦略(ペース配分)が重要です。一般的に、長距離・マラソンレースではイーブンペース(一定速度)で走ることが最適とされています。しかし、レース経験の少ない市民ランナーにおいては、自分の適性ペースを把握することは難しく、前半のオーバーペースの結果、後半失速するランナーも多く見られます。そこで、つくばマラソン全参加ランナーのビッグデータを解析し、マラソン成績とペース配分の関係の他、性別、年齢などの影響を明らかにして、ランナーの皆さんに、各自のペース戦略の指針となるデータの提示をしていきます。 |
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スタートを科学する
■Aブロックを2つに分割 スタート時の混雑を緩和するために始めた「ウェーブスタート」。しかし第1ウェーブは走力が拮抗しているランナーが多いため、スタート直後の混雑がなかなか緩和出来ずにいました。そこで今回、Aブロックをタイムにより2つに分け、出来るだけスムーズなスタートが出来る環境整備を目指します。
各ブロックのタイムは次の通りです。 |
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■ウェーブスタートの効果
第38回大会において5つのウェーブで実施したウェーブスタート。その効果はコース上の混雑緩和と、グロスタイムとネットタイムの差の縮小に表れています。特に、5時間以降のランナーのグロスタイムとネットタイムの差は平均で約5分、縮小しました。
<一斉スタート(34回大会)と3・4・5ウェーブ(35・37・38回大会)の比較>

※縦軸:通過人数(人)/横軸スタート(第35・37・38回大会は第1ウェーブのスタート)からの経過時刻(h:mm:ss)

※縦軸:グロスタイムとネットタイムの差(h:mm:ss)/横軸:ランナーの記録レベル
※協力: 筑波大学 体育系教授 鍋倉賢治
ランニングフォームを科学する
フォームの解析は、筑波大学とカシオ計算機の共同研究で開発された解析アルゴリズムを搭載した小型モーションセンサーをランナーの腰に装着し、一昨年(第37回大会)91名、昨年(第38回大会)は97名のランナーの方々にご協力いただき、多くのフォームに関するデータを収集することができました。ご協力いただけましたランナーの皆様に御礼申し上げます。
前回はマラソンタイム別の結果を示しましたが、今回はマラソンの前半と後半ハーフのタイム比を基準に3グループに分けて示しています。比率が、0.49以上をA、0.46〜0.49をB、0.46以下をCとしました。幅広い記録のデータをグループ化するために前半5キロのデータを100%として規格化してグループの平均にしています。
※縦軸 : 最初の5kmに対する割合(%) |
スピード
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ランニングスピードは、ストライドとピッチの積で決まります。ピッチはどのグループもレース後半まで大きな変化はありませんが、ストライドはスピードと同様にBおよびCでレース後半に低下しています。このことは、マラソンの後半のスピードの低下はストライドの低下によるものであったことがわかります。 | |
ストライド![]() |
ピッチ![]() |
この要因を探るために、接地時間と上下動に着目しました。 ピッチは1歩の時間の逆数で(1歩の時間が長くなるとピッチが低くなる)、1歩の時間は接地時間と滞空時間からなります。 グループCもピッチは維持していましたが、接地時間は長くなっていることがわかります。このことは滞空時間が短くなっていることを示しています。上下動が小さくなっていることも示されています。ランニングではストライドは足を前後に広げた大きさよりも、空中を跳躍した要素が大きくなります。滞空時間が短くなるとストライドを維持することが困難になると考えられ、このことがスピードの低下につながったのでしょう。 一方で、グループBは上下動がレース序盤から小さくなる傾向がみられ、接地時間の増大もそこまで大きくありません。疲労を想定してレース序盤から終盤にスピードが低下しにくいランニングフォームがあることが示唆されます。今後、さらに詳細で、個別の検討が必要でしょう。 |
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接地時間![]() |
上下動![]() |
※協力: 筑波大学 体育系准教授 榎本靖士
カシオ計算機株式会社
景観を科学する
■距離表示の色で気持ちをコントロール
1kmごとに掲出している距離表示の色は、フルマラソンにおけるランナーの状態や心理を考えて、色彩心理の面から配色を考えました。ランナーは5kmを一つの区切りとして意識しながら走ることが多いため、5kmごとに色を変化させ、より区間を意識して走ることのできる環境をつくります。

■表示物の色で必要な給水・給食物を
給水所の表示物は、給水・給食物(水、アミノバリュー、バナナ、きゅうりなど)から連想される色を選定し、視認性・識別性を高める効果を期待。
また、給食物の表示物は「給食を科学する」で選定された理由がわかるようにしました。

■のぼり旗で行きたい施設を見つける
多くのテントが設置されているメイン会場において、更衣室や手荷物預り所など、自分が行きたい施設がどこにあるかわかるようにのぼり旗を設置。また、施設名は、外国人のランナーでもかわかるよう、英語とピクトグラムで表現しました。

※協力: 筑波大学 芸術系教授 山本早里
給水・給食を科学する
■過剰な給水に注意! マラソンに給水は欠かせません。給水不足はもちろんですが、過剰な給水も体調悪化の原因となります。正しい給水が出来ているかどうか、走る前と後の体重の変化で検証しましょう。
<正しい給水量のチェック方法>
☞脱水率が2%程度までの場合→水分補給量が適量 ![]() |
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走る前より走った後のほうが体重が増えていた場合は、給水が過剰だった、ということになります。普段の練習の時も、走る前と後で体重を測って検証してみましょう。
メイン会場の「給水量チェックコーナー」には体重計がありますので、是非、レース前後で検証してみてください。
■体調に配慮した給食で完走しましょう!
コース上の給食は、走っている間の体調を崩さないよう配慮して提供しています。
エネルギー補給に欠かせない「糖質」ですが、血糖値を急激に上げるものは低血糖を招く危険性があるため、そうでは無い糖質(果糖など)を提供。また、疲労の原因となる「活性酸素」の発生を抑える「抗酸化物質」を多く含む食品も取り入れています。メープルシロップの糖は体内への吸収が早く、糖質代謝に必要なビタミンB1、B2を他の食材で補わなくてもエネルギーに変換できる「効率的なエネルギー補給」の給食としてレース後半で提供しています。
それぞれの表示物でそのポイントがわかるようにもしていますので、意識しながら食べてみてください。

※協力: 筑波大学 体育系 運動栄養学 准教授・管理栄養士 麻見直美
応援を科学する
ランナーの活力となる「沿道応援」を活性化するため、つくばマラソンでは、今ではおなじみとなった距離表示の下の応援コメントを第30回大会から始めました。 また、地元の小学校・中学校の協力で、応援演奏を数ヵ所で行っています。 第37回大会のランナーアンケートでは、ランナーの皆さんが希望する応援の内容は応援してもらう場所について聞きました。今後、この結果を参考に、沿道応援の活性化に取り組んでいきます。 |
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